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また「そんなわけないでしょ、自意識過剰」っていつもの如く斬られるか。はたまた完全無視されるか。足蹴りか、平手打ちか、それとも……
「…………だったら、どうする?」
「えっ」
予想外の言葉に直輝は真顔で振り向いた。彼女は微動だにせず、凛と立っている。
真っ直ぐ視線は向けられていても、表情は読み取れない。
ただ、悲しみを秘めている、答えを求めている、それは即座に分かった。
知っている。昔の彼女は、いつもこんな顔をしていた。
そうさせたのはオレのせい。
オレのせいだから……
「やめてくれ」
視線を逸らして直輝はポツリと呟いた。低く重みのある声。
すぐ近くにいるはずなのに、まるで遠い二人の距離。
「オレ達は……”あの時”から決めただろ。このままの関係でいるんだって。
近すぎても離れすぎてもいけない。お互いのために」
一瞬、雅の顔が歪んだ。
直輝も苦痛に耐えているようだった。
俯いてポップコーンの箱を強く抱えた。それで気持ちを抑えようとした。
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