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ふと直輝は足を止めてじっと遠くを見つめている。絶叫系アトラクションの方向だった。
雅はポップコーンを食べていたが彼の異変に気づいて手を止める。
「また拓人くん?」
「……なんかアイツ、波奈ちゃんに振り回されてるみたいだ」
あの彼が振り回されているなんて想像がつかないと雅は微笑した。
直輝はそんな嘘は言わない。吸血鬼同士なら脳内のテレパシーが無くても今何をしているのか感じることができるらしい。同じ志を持った仲間なら尚更。幼い頃から一緒だった直輝と拓人は何かと共有できることが多い。拓人は若干嫌がっているが……。
直輝曰く、昔から彼を見ていたから想像して脳内で映像化することができるそうだ。
二人が一緒にいた理由に互いの家系の事情があるというのも雅は後から知った。
こうやって当たり前に直輝の隣にいられるようになったのはいつからだろう。
今では普通のことだけれど……
「どうした、雅」
「……別に」
ぎゅっとポップコーンを抱えて、前を歩いていた直輝に近づく。
彼はいつものようにニヤッと笑った。
「へへっ、オレの姿に見惚れてたとか?」
そういってさっと彼女が抱えている箱からポップコーンを一口かじる。
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