猫と少しの意地悪

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まさかの色んな意味で未経験? うそでしょ。この顔で? いや、この顔だからなのかな。 「おい。オマエ」 「あのねえ、アンタ……いやいや。ヤマトね。人にオマエ言うなって言ったくせに自分はいうワケ? 私はアヤメです。シナガワアヤメ。そういう名前がちゃんとあります」 「……」 「呼ばないのか! はぁ、横柄なのか小心者なのか解んないわね」 「……アヤメ」 「! 声ちっさ!」 「う。うるせーな! さっきからいちいち突っ込むんじゃねーよ」 「わかった、じゃあスルーします」 「それはイヤダ」 「どっちよ!」 ヤマトは、キョトンとした後笑い出した。 「あははは!」 私は驚いて彼を見ていた。く! 笑うとかわいいじゃないのよ。 「俺……女とこんな普通に話したの初めてだ」 「……あ。うん……そう」 不覚にもその笑顔にドキドキしてしまった。と、思っているとヤマトは涙を拭うような仕草をした後コーヒーを飲んでふうっと息をついた。 「……『私の事どう思ってるの?』って聞いてくる奴がいるんだ。で、素直に『キツネに似てると思う』とか『オカメインコみたいだと思う』って答えたら、スゲー怒ってた」 「……」 「あとは『つきあって下さい』っていうから『どこに?』っていったらキレた。『好きです』っていうから『何が?』『大崎君が』『なんで?』『えっと、ひとめぼれとか』『それって顔?』って聞いたら泣いた。 そういえば中学の時に、下駄箱にチョコレートすげー入っててキモいから捨てたら女子が怒ってきたんだよな『酷くない?』って『靴のとこに食い物とかデリカシーねえわ』って言ったら泣いたな。えっと後は」 「も、もういいわ……はぁ」 私は眩暈を起こしそうだった。 この人、バカなんだ……生粋のバカだ。 「そりゃ、怒るわ」 「……」 「で? もう平気なの?」 「あ。たぶん」
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