猫と少しの意地悪

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「ねえ。私、初対面だよね」 「……話すのはな」 私は彼の顔をじっと見た。 初対面じゃない? どこであったんだろう。でも、こんなに綺麗な男の子なら覚えてるはずだしな。 そう思いながら首を傾げた。 「どっかで……あったことあるっけ」 「……さあ」 「勉強教えてくれるとか、案外いい人だね」 「……別に、そういうんじゃねえし。ほら、どこだよ……はぁ? こんなとこかよ」 この人すっごい面白い。 てか、本当に頭いいんだな……そう思いながら宿題を教えてもらった。 「すごーいよくわかった、ありがとう。教え方上手いね、お兄ちゃんなんかより全然わかったし」 「……アヤメが嫌じゃなかったら、また教えてやってもいい」 「上からだなぁ」 「……」 「じゃあ、そうだなぁ。勉強教えてくれる代わりに、しばらく彼女のフリでもしててあげようか?」 「え」 「だって、そんな2日3日で別れたとか言ったら、親御さん気の毒じゃない」 「ほ、ほんとうか?」 「いいわよ、でも、そのかわり勉強ちゃんと教えてね」 沢山の猫たちがくつろぐなかで、私はとんでもない提案をした。 「お、教えてやってもいい」 「じゃあ、契約成立ね。どっちかに好きな人ができたりしたら、契約は解消よ? いい?」 「……そう。だな」 複雑な顔をした後、彼は猫を撫でながら何かを思いついたように言って。 「契約期間中は、あれとかするのか」 何アレって! まさか、そこまで? 「あれ?」 「その……デートとか」 デート? ああ。そっかこの人、デートした事ないんだ。 やっばい。超面白い。単純! かわいーじゃない! 「そうだね。デートしようよ」 「! そ、そうか」 耳を赤くしたヤマトは少しだけ嬉しそうだった。 「今度の日曜、映画とか行く?」 「え。映画、そ、そうだな」 とりあえず、今つきあってる人もいないし、若干性格に問題ありそうだけど友達にするにはいいよね。 そんな風に安直な考えから始まったのだった。
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