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リビングらしき広い部屋にはソファがあって大きなテレビがあった。
「おう、景虎。お客さんに挨拶か? オマエはホントお客好きだな……やあ、フジコちゃん。今日も美人だ……ん? 華子は寝たてのか? わざわざお出迎えありがとうな」
「……」
「小十郎、メシの時間はまだだぞ? 家康はそんな所で寝てるとかあちゃんに怒られるぞ」
リビングのあちこちに気ままに過ごす猫たちの姿があった。
私や友人に対する横柄な態度や意地悪な顔つきはどこへやら、いい人というのか猫に対しては優しいという単語が当てはまる物腰だ。
「すご、猫カフェみたいね」
「カフェみたいに上等なコーヒーはねえけどな」
そういいながらも電気ポットでお湯を沸かしてインスタントのコーヒーを淹れてくれた。
「……あ。ありがとうございます」
「座れば?」
「……じゃあ遠慮なく」
ストンとソファに座ると好奇心旺盛なタイプの猫たちが寄って来てスンスンと鼻を鳴らして私の匂いを嗅いだ。
「あの……ってか、なんで私? 私の友達が来たがってたので、そう言う人の方が適任かと」
彼は不服そうに私を見た。
「ウゼーんだよな」
「はい?」
「ああいうのさ。王子、王子って、俺んち城でもなんでもねーし」
子供みたいな物言いに思わずクスッと笑うとわたしをチラリと見て言った。
「あんたはそういうの興味ない感じだったから……悪いな。男いるんだろ、おとーもメンドクセーから適当に言ったけど」
「ああ、彼女ってやつ。驚いたわ」
「……適当に帰っていいぞ」
私は彼を黙ってコーヒーを飲みながら彼を見た。
彼は、さっきから上から発言をしてくるけれど本当は自信が全くないタイプなんじゃないかと思っていた。
私は意地悪をしてみた。
「でも、本当にすぐに帰ったらちょっと寂しいでしょ?」
「!」
「……」
やだ。図星っちゃった。
何とも言えないような表情がやけにかわいかった。
もしかしたらこの人は、かまってちゃんなのかも知れない。素直になれないかまってちゃん……めんどくさ! でも、ほっとけないタイプなのは顔がいいだけってんじゃなさそうね。
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