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「べつに、そんなんじゃねーし」
うわ。わっかりやすーい。
私は笑いそうになるのを堪えた。
「……両親が」
「え」
「心配してんだよ……変な噂あったりで」
「噂?」
「……女に興味がないって、動物と喋ってばっかりいるから、動物にしか欲情しねーとか、動物に子供産ませたって内容の手紙みたいのが近所にばらまかれた」
「はぁ? そんなわけあるかっての、どこのバカがそんなアホな噂流してんの?」
私がそう言うと、しどろもどろと返事をした。
「……俺がふった女が束になって、この辺りにポスティングしたんだ」
「はぁ? そんなの警察沙汰じゃないの?」
「一応相談はしたけど『君にも非があったんじゃないの?』とか言われたよ、まあやった奴らはすぐに解ったんだけど注意程度だったみたいだし」
私はポカンと口を開けたまま彼を見ていた。
なんだこの人。解らなくなってきた……すっごいイヤなヤツだと思ってたけど、本当にただのかまってちゃんなのか……
「ってか、アンタ。どんなフリ方したのよ」
「アンタって名前じゃねーし。女のくせに、アンタとか言うんじゃねーよ」
「ったく、生意気ね。そういうのが良くないんじゃないの?」
「……」
「めんどくさいなぁ……なんだっけ? ええっと、ヤマトだっけ? ヤマトくん? それともオオサキくん? さん?」
「……ヤマトでいい」
ぶ。
超~耳とか赤くなってるし、ウケる。
そう思いながら笑い出しそうな頬の筋肉を誤魔化すようにコーヒーを飲んだ。
「じゃあ、ヤマト。どんなお別れをしたの?」
「お別れ……って別にしたことねーし」
「え? 告白されてごめんなさいしたってだけ?」
「ああ。まあ、そうかな」
「付き合たことは」
「ねえよ」
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