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「そうか。苦労した甲斐があったな。」
「ええ、苦労しました。」
苦笑した理美が本当に苦労したのは浩大の
息子の出来よりも、彼があまりにも父親に
似ており、浩大に教えているような気が
してならなかったことなのだが、それは
言わないでおいた。
「理美。」
「なあに。」
賢一は身体を起こすとポケットから出した
それを理美に向かって投げた。彼女が掌で
受け取ったのはこの家の鍵だ。渡仏する
前に交わした約束通りに。
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