7人が本棚に入れています
本棚に追加
女の子がいる。
錦糸町駅から歩いて20分の寂れた商店街を抜けた先に、俺が住む木造のボロいアパートがある。
そのアパート二階の古臭いドアの前に、薄い紫のニット帽を被った短髪の女の子が突っ立っていた。
ニット帽の色がどこかで見覚えがある。
見た目は中学生になるかならないかで、真っ黒のダッフルコートに藤紫のスカート・黒タイツを着用していてもかなり寒そうだ。
可愛い。でも、怪しい。
俺の部屋の前というのもあったから、仕方なしに声をかける。
「ちょっと、君。どうしたの?」
「正信様(マサノブ)!会いたかった」
砂糖に蜂蜜をかけたような甘っとろい声で少女は叫ぶ。
答える間もなく、彼女は抱きついてきた。
うわっ!?
あれ、でもなんか懐かしい匂いがする。
って、このガキはどうして俺の名前知ってんだ。
彼女はぐっと力を込め、離してくれそうにない。
「正信様の匂いー。安心する。ずっとこうやってぎゅーってしたかった。さあ一緒にエロエロしよっ」
「おい。警察呼ぶぞ」
こんなふざけた状況から、命のかかった危険な刀探しをする羽目になるとは……想像はできないな、その時の俺は。
絶対に。
最初のコメントを投稿しよう!