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速水さんは、より真剣な面持ちになった。
「総会資料、昨日印刷しただろ? 印刷する前に、確認もしてもらったよな。総会が何日にあるか、覚えてねーの?」
「来月の11日ですよね」
「じゃあ、その日は大事な用事があります、とか言えただろ」
私はハッとした。
確かにそうだ。
お客さまも、私に予定がないことを前提に誘ってくれたのだから、用事があると言えば、「ああ、だったら仕方ないね」となったかもしれない。
どうして、そんな簡単な断り文句が思い浮かばなかったのだろう。
呆然とする私に、速水さんは容赦なく言葉の矢を放った。
「おまえ、まだまだだな」
「……すみません」
首を垂れて謝ると、今度は少しだけ優しい言葉をかけられた。
「電話だと顔が見えない分、相手に気持ちが伝わりにくい面もあるからな」
確かに、私たち事務員は、電話だけでお客さまとやり取りをしなければならない。
表情が見えない分、言葉や話し方、声の抑揚などで、相手の気持ちを察する必要がある。
しかし、私たち社員は、お客さまのように感情的には話さないよう心がけているため、どうしても、こちらの気持ちは伝わりにくい。
だからこそ、適切な言葉を選ばなければいけないのに、私は失敗してしまった。
「電話応対、難しいです……」
弱音を吐くと、速水さんは苦笑した。
「実際に顔を合わせるのも大変だぞ? ホントにいろんな人がいるからな」
「そうですよね……。でも、電話だけだと、見た目の情報がないから、客さまがどんな人かも、想像するしかないんですよね……」
私がそう言うと、速水さんは急にニヤリとした。
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