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「おい、1本の電話でそんなに落ち込むな。お客さんはひとりだけじゃないだろ」
私は我に返った。
「そうですね、そうでした……」
速水さんは「それに」と続ける。
「今の電話はダメだったとしても、懇親会に誘われるってことは、お客さんに好かれてるってことだろ。
それは、笹木の今までの電話応対が良かったってこと。だから、そこは評価してやるよ」
私は感動した。
岩見課長の(副支店長の受け売りの)言葉の次に、胸を打たれた。
───なんてよい先輩なんでしょう。
彼の言葉ひとつで、心のもやもやが晴れていく。
「私、速水さんのことを鬼だ、鬼だとばかり思ってましたけど、意外と優しい一面もあるんですね。 本当に、心から……驚きました」
速水さんは眉を吊り上げた。
「おい。くだらないこと言ってる暇があるなら、早く次の電話に出ろ!」
私は大きな声で「ハイ!」と返事をし、急いで受話器に手を伸ばした。
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