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あとがき
冒頭の主人公が何となく図書館に駆け込み、何となく本を読み漁って、何となく過去に縋っている。
そこから読み手は何となく主人公は焦っているというのが分かる。
その何となく進む主人公の考えを何となく読み進め、過去にこだわっているだけでなく苛立っていることが分かる。
そうして全てが急停止するかのように、最後のページに記された答えを読み手が目にする。
(あの日、主人公は『従弟が自殺した』という知らせを受け、現実から逃げるように図書館へ来た。
自分を落ち着かせようと本を読み始めるが内容は頭に入って来ず、過去ばかりが頭を廻る。
従弟がいてもいなくても何も変わらない日常に苛立ち、何もできなかった自分に苛立つ。
そうして『全ては決まっていたのだ』と普遍的な答えを見出だし、死のうとする。)
読み手は冒頭や中盤を思い起こし、『何なんだこのつまらない作品は』と思って読み進めていた少し前から、時は進んで今、このあとがきを眺めている。
これらの『何となく』が明確化された時、恐らく読み手は自身の思考の中で瞬時に過去も現在も未来をも体感するはずである。
というのが作者の意図ですが、そこまで綿密に感じずとも『一本の線が繋がった』ような感覚を体験していただけたなら、私としては本望です。
『加味』をご覧いただき、ありがとうございました。 新堂晴巳
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