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『あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!』
脳を切り裂くような、その叫び声が聞こえた気がしてハルはベッドから飛び起きた。
「は……はぁっ。はぁっ。……なんだ?今の夢」
夢だとわかっていても息が切れるほどの悲痛な叫び声だった。
気づかないうちに握りしめていた両手を、片手ずつゆっくり開いた。手のひらは、どちらも汗でぐっしょりと濡れていた。着ていた綿の長袖シャツで額の汗を拭うが、遅かった。汗は前髪から滴り落ち、顔を流れ落ちる。
「着替えよう」
寒さを感じて落ち着きを取り戻したハルは、濡れタオルで全身を拭くと、新しいシャツに着替えて彼の部屋の一人がけソファに身体を沈めた。新しい掛け布団を上からかけた。彼がさっきまで寝ていたベッドの布団は、彼のシャツと同じく汗で濡れていたからだ。
灰色の景色。
一人の男。いや、女だったのか?
建物が見当たらない。
人が居ない。
一本の棒と吹き抜ける風。
なんだ?どこの景色だ?
「あれはいったい、どこなんだろう」
ハルはゆっくりと夢を思い出していた。
視えた景色を辿る。
記憶を辿る。
叫び声をあげた人の顔を思い出そうとするうちに、ハルは再び眠りに落ちた。
次に目が覚めたのは、目覚まし時計を止めた時だった。
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