進化の惑星

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二足歩行の猫の歴史は古かった。 だが、人の歴史はもっと古い。 ” 人の歴史は、二足歩行の猫の歴史の30倍ほどある ” 教授が黒板に書いた文字を生徒達がノートに書き写していく。カリカリと、ペンでノートを引っかく音が一斉に響いた。 あらかた書き終わったかという頃「はい!」と手を挙げる者がいた。それに気づいた教授が彼を指す。 「はい、どうぞ。ハル」 「猫が二本足で歩くようになってから数百年の歴史があると勉強しました。なぜ猫は二本足で歩くようになったのでしょうか」 教室には、自然の光を取り込めるようにと天窓が付けられていた。教室の東側の窓から入っていた光が徐々に真上に移り始める時刻だった。 教授の耳とヒゲと、しなやかに長い尻尾がピクンと動いた。 短毛の茶トラ猫であるマロン教授の尻尾は、ゆったりと左右に揺れ、微かにコロコロと喉を鳴らす音も聴こえた。教室内では同じようにコロコロと喉を鳴らし尻尾を揺らす者が半数ほど居た。 彼ら猫たちは講義中だというのに、降り注ぐ太陽光を浴びて目を閉じかけていた。 この教室では、人と二足歩行の猫が一緒に授業を受けていた。この教室だけではない。この学校いや、今は国中で人と二足歩行の猫が同じように生活している。 「あの、マロン教授。僕の質問の答えをいただけませんか」 ハルが待ちきれずに催促すると、教授は重たそうに瞼を開けた。 「ふむ……それは、進化かもしれない。われわれ二足歩行の猫は、見てわかるように人に近い。脳のサイズが大きくなり、身体も全体的に大きくなった。そのために前足が地面から離れ、身体を支えるために後ろ足が太く長くなった。ただし、猫の特徴である耳と尻尾、体毛は以前の猫だった時と変わらない。顔も猫の特徴を持ったままだ。これが進化の途中なのかどうかは未だわかっていない。君ら人の進化については……どうだろうか、猫の私では気づけないのかもしれないが……」
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