進化の惑星

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二足歩行の猫が初めて人前に姿を現したのは、数百年前の事だ。それまでの地球は、人が支配する惑星だった。 いや、そう思っているのは、人だけだ。地球は何者にも支配されていない。事実、人は猫の進化に気づいていなかった。 まだ、猫が四足歩行だった頃。 はじめのうちは、やけに頭の回る猫がいるなと思ったものだった。人に飼われていた猫の多くが、人の行動を先読みして人の心理をうまく利用して食料を得る。 そのうちに、手先が器用になった猫は食料の保存場所から自らで食料を得るようになった。冷蔵庫や戸棚を器用に開ける術を身につけたのだ。 まだ目に見える範囲の変化は顕著でなかったが、その頃には脳の容量は2割ほど増えていたようだった。指先は一本一本が独立して使いやすくなっていた。指と指の間の毛が、その指の変化をうまく隠していたために、人は全く気づきもしなかった。それどころか、自分が食料の保存場所を忘れてしまったのだろうか、そもそも購入していないのだろうかと、自らの記憶力の低下を理由に深く考えることを拒絶していた。 そのために猫は、そのような大胆な行動を取っても、怪しまれることなく人の暮らしに溶けこんでいたのだ。 その時点ではまだ猫は人に飼われていたが、それから数年の後に飼い猫も野良猫も全て人の生活から、パタリと姿を消した。
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