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* 「ああ言う親だから、こういう子供になるんだって」 そうね、とも言えず、愛由美は和希を睨みつける。 「大体! 武藤くんからしたら、私なんかおばさんでしょ! なのになんで私なの!?」 和希は頬杖をついたまま、じっと愛由美を見つめる。 「武藤くんなら、もっと可愛くて、歳も近い子がいくらでも……!」 「俺は愛由美がいい」 はっきり言われ、愛由美は背筋を伸ばしたまま固まる。 「初めに言ったろ。最初はからかい半分だった、でも会ううちにどんどん愛由美が好きになった」 この時二人は気付いていない。両隣のテーブルの客が聞き耳を立てている事に。 「俺しか知らない愛由美がいる、それだけで興奮した。本当に好きになったんだからいいだろ」 「良くないから、言ってるの」 愛由美は頭を抱える。 「俺が好きなんだろ?」 頬杖をついたまま、傲慢に言う。 「もう、なんでそんな自信満々なのよ」 「さっきだって、嫌いじゃないって」 「好きとは言ってない!」 「そんなこと言ってると、またお仕置きだぞ」 言われて、ぐっと押し黙る。 「お仕置き、楽しみなんだろ」 組んだ腕をテーブルに乗せ、身を乗り出し囁くように言う、それだけでも色気のある仕草だった。 思わず愛由美は視線をそらす。 「は、晴真はもっと、優しかった……っ!」 「当たり前だ。和希だってバレたくなかったし、お前口説くために必死だったからな」 両隣のテーブルの客は、ちらちらと二人の様子を伺い見る。 和希の方が若いのは判るが、そんなに年の差がある様には見えない。ごく普通の痴話喧嘩の様に見えて、男ばかり四人の左側のテーブルの面々は、あからさまに興味津々だ。 「……そんなに本気だって言うなら、もっと早く言ってくれたら良かったのに……」 「そうしたら、俺のものになったか?」 「ならないけど……」 「じゃあ、いいじゃねえか。ここまで抵抗されるなら、ずっと騙しておきたかったくらいだ」 「もう……っ! 私なんかの何処がいいの……!」 愛由美は小さな声で怒鳴る様に言うのを聞いて、和希は頬杖をついたまま語り出す。 「そうやって困ってる顔もいいし、笑顔が可愛いとことか、何にでもすぐに感動して、口癖が「凄い」ってところとか」
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