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第二章 東北新幹線脱線転覆事故
東京郊外にある清明神社は千年の歴史が
あり、昔から願掛け神社として
有名であった。
その一方では、御神木に藁人形を釘で
打つと恨みが成就すると噂されている
神社だ。
その証拠に、御神木には無数の藁人形が
発見されている。
別の場所の御神木には、てるてる坊主
の様に枝から吊るされている藁人形まで
あった程だ。
そんな場所に、隆が佇んでいる。
時間は深夜1時を過ぎていた。
暗闇に包まれた歴史のある社は、
水を打った様に不気味に鎮まり
返っている。
辺りは真っ暗で生暖かい風が頬に当たり、
おどおどろしい静寂だけが、
この世を支配している様に感ぜられた。
清明神社の鳥居を潜ると、
境内の前に出る。
再びスマホを見ると、午前2時。
周りには誰もいないのに、視線だけを
感じながらおののく様に進む。
境内から裏に廻ると、樹齢千年はあろうか
太い幹が堂々と聳えている。
余りの恐怖に逃げたくなる気持ちを抑え、
この御神木に決定した。
近くで観る御神木には、方々に無数の
穴が空いており、かつて沢山の藁人形が
五寸釘一本ではりつけにされていた
痕跡が生々しい。
「呪い返しを成功させなければ・・・」
隆の口から、呻く様に漏れ聞こえる。
沈黙を保ったまま、ポケットから
ワンカップ酒を取り出し、幹の根元に
置くと同時に白装束に着替えた。
火のついた蝋燭を手拭いによって、
頭に縛ると準備は整った。
ところがである、この時点において
重大なミスに気付いてしまった。
慌てていたのだろう、肝心の藁人形を
忘れて・・・。
唖然としたまま、その場に立ち尽くす隆。
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