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あまりの具合の悪さに無理だと判断した私は、並木先生に一言謝り帰らせてもらう事にした。
雑居ビルを出てから、さっきの浩太郎の真剣な眼差しを思い出しながら静かに空を仰ぐ。
『終わったら連絡してください』
浩太郎から届いたメールはなぜか敬語で、それが今の2人の距離を物語っている気がして余計に遠い存在に感じた。
普段ならいきなり電話をかける事は決して選ばないけれど、この日の私は具合が悪くてメールを打つ気力もなかった。
体調が悪い事を伝えると『迎えに行くから』そう言って5分も経たずに浩太郎は来てくれた。
「響っ!」
声が聞こえた途端、力が抜けそうになった。
浩太郎の顔を見たら、今日一日必死に我慢していたものがプツリと切れていく。
「お家に、帰りたい…」
迷わず浩太郎の胸に飛び込んだ私を、温かい腕が支えてくれる。
その腕に…私はひどく安心したのを覚えている。
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