1211人が本棚に入れています
本棚に追加
その後の記憶は途切れ途切れだった。
「響」
私の名前を呼ぶ声は心配を滲ませた声で、髪を撫でる手は優しくて温かい。
気がつけば私は自宅のベッドにいた。
浩太郎の顔が見えて、私はそれに安堵してまた瞼を閉じた。
翌朝、目を覚ますといくらか身体が楽になっていた。
高校の時のジャージを着ている姿に笑い、浩太郎が一晩中私の看病をしてくれた事を知った。
きっと寝ずに看病してくれていたんだろう。
浩太郎の寝顔を眺めているうちに私も隣で寝てしまい、次に起きたのは夕方。
シャワーを浴び終えて着替えた浩太郎がリビングに現れた。
「あのね…こうたろ」
「あの日は、ごめん。響にひどい事言って、本当に悪かったと思ってる。ごめんなさい」
あの日、置いて行った紙袋を勝手に開けた事を謝ろうと思った。
それを遮るように浩太郎が頭を下げて謝るから、一歩近付いて私も彼に向き合った。
「浩太郎…謝らなくていいよ、私も…叩いてごめん」
「…響」
顔を上げた浩太郎と視線が絡まる。
今日こそ、ちゃんと自分の気持ちを話そう。
浩太郎の事が好きだと伝えようと思った。
最初のコメントを投稿しよう!