episode.5

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突然立ち上がった浩太郎が「帰るわ」と一言落とした。 見上げてもこちらを見てはくれなくて、遠くを見ている浩太郎の視線はどこか冷たく感じる。 「体調悪くなった」 嘘、だと解った。 私がいるからだ。 私がいるから…浩太郎は帰るんだと思った。 私は慌てて出て行く浩太郎を玄関まで追った。 「こうたろ…」 「何?」 ドアに手をかけたまま、浩太郎は振り向いてもくれなかった。 「…大丈夫?」 「あぁ。それだけ?」 浩太郎の低くて冷たい声に、それ以上何も言えなくなった。 「じゃあ」 微かに浩太郎の香りだけを残して、重たいドアが閉まる音だけが冷たく響いた。 リビングからみんなの笑い声が聞こえてくる。 神様。 時間を巻き戻せるなら…もう一度、あの夜に戻してください。
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