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「響ちゃん!」
声のする方へ視線を移した。
少し先に車の前で立っている渡辺さんが見えて、私は早足で駆け寄った。
「遅くなってすみません!」
「いいえ、あけましておめでとう」
「あ!あけましておめでとうございます」
「今年もよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
お辞儀をした私に渡辺さんがクスッと笑うから視線を上げた。
目が合うと渡辺さんは柔らかく微笑んだ。
「今日元気ないけど、なんかあった?」
「…いえ、特に…何もないです」
「そ?なら僕の気のせいか。あ、これね結構重いから部屋まで運ぶよ」
「わざわざ届けてもらってすみません」
渡辺さんと会うのは誕生日以来だ。
医学書を届けにわざわざ時間を割いて来てくれた渡辺さんに申し訳ない気持ちが湧いてくる。
さっきの事があって気分が沈んでいたから断ろうか散々悩んだけれど、また浩太郎から逃げ道を探して渡辺さんの優しさに甘えている私は狡い。
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