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渡辺さんの言葉の通り、私は悲しい顔をしているのだろうか。
浩太郎の事を思い出すと、悲しい事の方が多かったように思う。
ただ、数少ない嬉しかった事が極端に何倍にも膨れ上がって、魔法のように悲しい事を忘れさせてしまう。
それはあまりにも長すぎて、浩太郎の忘れ方を忘れてしまうくらい。
もっと早く誰かにこの気持ちを話していれば、私も少しは素直になれたのかな。
楽になれる方法なんて見つからなくて、ただひたすら君を想って想って…想い続けて。
会いたくて、でも会えなくて苦しくて、そんな言葉じゃ足りないくらい寂しかった。
次にいつ会えるかも解らない、約束の言葉もない、私と浩太郎はずっと幼なじみのままだ。
今までも……そう、これからもきっと。
渡辺さんの手が優しく私の髪を撫でるから、顔をそっと上げた。
「…泣いてる」
「あっ…、すみません…」
慌てて繋がれた手を離して瞼をゴシゴシこすった。
いつの間に涙が出ていたんだろう、自分でも気が付かなかった。
誕生日の夜、浩太郎からのプレゼントを見て涙を流したあの日から、私はもう泣かないと決めたのに。
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