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あれから一週間が過ぎた。
仕事が始まり、冬本番を迎えると共に風邪やらウイルス感染患者が増えた。
私の働くクリニックは休む暇もあまりなく稼働している。
今までなんの変化もなかった私の生活が一変した。
それは、渡辺さんとお付き合いを始めた事だ。
告白を受けた日、二人で初詣に行ってお参りをした後、食事をして帰宅した。
生まれて初めて人前で手を繋いで歩く、という行為がこんなに恥ずかしいものなのかと思い知らされ。
そして、目の前のこの人が彼氏なのだと思うとどうも照れてしまって食事中も終始おかしな会話になってしまった。
そんな私を見て『可愛い』と言ってくれる渡辺さんは珍しい人だと思う。
浩太郎なら間違いなく『響、気持ち悪いよ』と罵るだろう。
診察を終えて大きな窓を開けた。
ヒュルリと吹きつけた風が私の髪をさらっていく。
『もう、彼の事は忘れて。いや、僕が必ず忘れさせるから』
渡辺さんが言った言葉が頭の中で何度もリフレインして、静かに目を閉じた。
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