episode.6

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鍵をかけてクリニックを出る。 空からはらりと落ちてきたみぞれ混じりの雪が私の頬を濡らした。 『今日は夕方以降雪が降るかもしれません』 朝の天気予報はどうやら当たったみたいだ。 『バカ響』 いつまでも残っている声を消そうとイヤホンを入れて歩き出した。 雪を見るたびにきっと、私はこうして浩太郎を思い出すのだろう。 始めて抱かれたあの夜を。 「はぁ…」 私の吐いた小さな溜め息が白く濁って消えていく。 代わりに降ってくる冷たい雪が、まつ毛に止まった。 瞬きをすると水分になって頬を伝って流れ落ちた。 ポケットの携帯が震えて取り出すと、渡辺さんからのメールだった。 日曜日の引越しの時間と、新しい住所が記載されている。 それに “ 解りました ” とだけ返信を返して、またポケットにしまって歩き出した。 駅の人混みに似ている後ろ姿を見つけると、視線が勝手にそちらに向かってしまう。 そんな自分に溜め息をこぼしながら自宅に帰った。
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