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僕はその知抄の顔を見つめた。
僕の知っていた彼女より少しだけ大人の女性に見える。
(何?私の顔に何か付いてる?)
(いや・・
綺麗になったと思って)
(やだ、前はブスだって思ってたんだ)
(違うよ、君は前から綺麗だった。
でも僕が君を好きだったのは、君の優しさや可愛らしさだったんだ)
(そうなの?)
(覚えてる?
僕達が初めて出会った頃の事)
僕はまだ小学生だった頃を思い出す。
あの頃僕の家は知抄の家と向かい合うように建っていた。
だが僕は、知抄が真ん前の家に住んでいた事を知らなかった。
僕の父は外交官であちこちの国へ転勤が多かった。
僕が生まれた時、父はアメリカ大使付きの官僚で母は一人実家で僕を産んだ。
父が僕を初めて見たのは、僕が二歳になって父が帰国した後だったらしい。
その後は母と一緒に父に付いて外国で暮らした。
日本に帰ったのは僕が十二歳日本では小学六年生の時だ。
僕は初めて日本の学校に通えると期待を胸に登校した。
でも友達は出来なかった。
理由は僕が他の子が出来る事が出来ず、出来ない事が出来た事・・
つまり、皆から見たら「変わり者」だったからだ。
考え方が違い、自己主張の仕方が違う、言葉は口から出ても相手の耳には届かない。
僕は段々誰とも話さなくなった。
そして事件は体育の授業があった後に起こった。
その日の授業はバスケットボール、僕が得意としたスポーツだった。
先生は二つのグループに生徒を分け、其をまた二つのチームに分けた。
それれらトーナメント式の試合を始めた。
当然僕がいたチームが一番になった。
先生は皆の前で僕を褒めてくれた。
先生に頼まれバスケットボールを片付ける。
良く見ると数が足りない。
あちこち探しやっと見つけて道具室にしまった。
その時だ、ガチャンと大きな音がした。
ドアに手をかけたが開かない。
鍵を掛けられていた。
バタバタと何人かの足音が遠ざかる。
「少しバスケが上手い位でいい気になるからだ」
そう笑う声が聞こえた。
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