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その事があってから、僕はこっそりと神社の敷地に出てみた。
確かに神社の部分には近付くだけで身体が震える位の空気が漂っていたが、寺の部分は静で何の気配も無い。
そして少しだけ空の上からこの建物の配置を見ると可笑しな事に気付いた。
イベントが行われた会場が神社ではなく、元の寺の敷地に立っていた建物だったのだ。
しかもよく見ると、その建物は様子がおかしい・・
建物の中の広さに比べ、外壁が異様に大きいのだ。
まるで何かをひとつ丸ごと包むように立っている。
僕は直ぐに親方を通じてこの神社の建物の配置図を用意して貰った。
勿論今の物と昔の物の二枚を。
其を比べ既に解体した建物を除外する。
そして確信する。
やはり事件が起きた場所は昔の修業場の跡地に建てられた倉庫を改築した物だったのだ。
僕はもう一度、イベントの行われた会場に向かった。
事前に親方が宮司から預かっていたその日に撮られた写真と、親方が聞いて来た目撃者の証言を元に建物の中を歩いて見る。
建物の中にはイベント当日のまま展示物が置かれていた。
水槽の金魚こそいないものの、水だってそのまま残されていた。
壁には人の流れを制御するための進行方向を示す手書きの矢印と、非常口を示すみどりの照明付き案内板。
僕は当日のように明かりを落とす。
そのまま失踪した女学生が最後に友人と話をし、目撃された場所に立った。
辺りを見回す。
あれ?
なんだろう?
おかしなものを見た気がする・・
もう一度回りを注意深く観察する。
あっ、これだ!
僕が見つけたのは緑色の非常口を案内する矢印。
僕の位置からは何の異常もないのだが、その視線を女学生の背の高さに会わせると水槽越しにしか見えない。
しかも水の入った水槽越しに見える矢印は、直接見える矢印とは反対の方向を指していた。
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