2人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はその事をふまえて、いなくなった女性が通ったであろう通路を歩いてみる。
そして彼女が消えたとされる場所で周りを見回した。
あの日その場には彼女の他に5人の学生が円を描くように集まっていた。
彼女は他の学生達より少し後に立っていた。
彼女と仲の良かった鑑摩耶と言う女性が、彼女が消える直前まで傍で話をしていたらしい。
摩耶の話では、他の学生に写真を撮ろうと言われ三人で撮るために振り返えったらもう彼女の姿は消えていと言う。
その間はほんの2、30秒だったとの事だ。
そうすると、彼女は壁を背に立っていたという事か・・
僕はその辺りの壁を押してみる。
何度か壁を押した時だ。
いきなり身体が壁をすり抜けて別の空間に飛び込んだ。
そこは生きてる人の目には暗闇にしか見えない明かりも何もない場所だった。
勿論幽霊の僕には周りが見える。
僕はじっくりとその場所を見る。
此処はたぶん昔の修業場の後だ・・
八角形の建物で、その一つ一つの面には、八体の仏像が設えてあった。
床には緩やかな傾斜があり仏像を拝みながら下に降りるような作りになっている。
簡単に言うなら巻き貝のように螺旋に下に降りる仕組みだ。
仏像のあるスペースを下ると、何段がの階段を経て下の階にと移動する。
其処の面には仏像ではなく、掛け軸に経典のような字が書かれた物が提げられていた。
僕は更にその下に降りる。
一番底は石畳のような床になっていた。
手で触れると濡れている。
最近ここに水が流れたように思えた。
僕は其処の壁も押してみた。
やはり、一ヶ所だけ他の空間に抜ける場所があった。
(嫌な臭いだ・・まるで下水管の中を歩いているみたいだ)
そう思いながら狭い通路を歩いた。
急に水音が聞こえた。
前方に明かりが見える。
急いで明かりの方に駆け出した。
僕は転びかけながら通路を抜けた。
其処は神社の裏手にある川岸に通じていた。
最初のコメントを投稿しよう!