探偵はお化け屋敷にもいる

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僕は神社の地図を思い出す。 昔の物には、確かこの建物の直ぐ横にこの川に流れ込む小川が記されていた。 何かの都合で埋められたのか、それとも水量が少なくなって地下に消え地図からは消されたのか? いずれにしても今の地図には無い小川が確かにそこに流れていた。 暫く歩くと本流に出る。 僕は川を見る。 人が歩いて渡るには水嵩が多い。 だが流されたとなると少なく思える。 (とにかく下流に行ってみるか・・) 丁度辺りも暗くなる。 僕達幽霊の時間だ。 川に沿って暫く行くと今は使われていない水車小屋があった。 その傍に動く人影が見える。 それは何かを手に水車小屋の中へ消えた。 そっと中を覗く。 「あれま! まだ起きてないんだ。 もう起きんと母さんに怒られるのに」 その声は歳をとったお婆さんのものだった。 「姉ちゃん、ごはん此処に置いとくかんな・・ 母さんが来る前に食べとくんやで・・ ならあたしは行くね、母さんに見付かると怒られるから」 お婆さんが話し掛けた方を見る。 藁や豆の袋に隠れるように寝かされた女性が見える。 僕はその傍に寄って息を確めた。 息はいているようだか意識はない。 その時だ、何かの気配に後ろを振り返る。 僕の後には女性が立っていた。「けんちゃん?」 そう呼ばれて彼女を見る。 見覚えはない・・ しかもよく見るとその顔は直ぐ傍に寝かれている女性のものだった。 「君は?僕を知ってるの?」 「けんちゃん・・私・・ どうしちゃたんだろう? 気付いたら此処に立ってたの」 「あのお婆さんは?」 「知らないわ・・ たぶん・・痴呆症だと思う。 毎日此処に来るけど私には気付かないし・・」 いや、痴呆じゃなくても今の君に気付くのは僕達幽霊か零能力の強い人だけだ・・ そう思って彼女を見る。
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