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「君、名前は?」
「けんちゃん?
貴方どうかしたの?
私が分からない?」
彼女の言葉に僕は急に頭が痛みだした。
「ゴメン・・
僕、昔の記憶は無いんだ。
だから、気を悪くしないで名前を教えて・・」
彼女はじっと僕の顔を見る。
「そう・・
そうよね・・
私が悪かったわ・・
私、天野知抄・・
貴方の、恋人・・だと思う」
「えっ?恋人?」
「貴方が本当はどう思っていたのかは知らないわ・・
でも、私は貴方を恋人だと思っていたわ・・
ずっと・・」
僕の頭はさらに痛みだした。
「とにかく・・
君をここから連れ出さなくちゃ・・
少しだけ待ってて。
人を呼んでくる」
「けんちゃん・・
戻って来る?」
「ああ来るよ。
直ぐに・・」
そう言った瞬間僕の頭の中で今と同じ言葉が響く。
(けんちゃん、直ぐに戻って来る?)
(ああ来るよ、少しだけここで待ってて)
なんだ?
これ?
僕の記憶・・
(ダメよバイト中でしょ?)
(いいんだ休憩中だから・・
知抄、これ・・)
(何?これ)
(誕生日のプレゼント。
本当は誕生石の指環って思ってたんだけど・・
バイト代が足りなくて。
クリスマスにはちゃんと買うよ、君の誕生石の指輪)
(バカね、そんなの結婚か婚約の時にくれるものよ・・)
(僕・・そのつもりだよ。
今は僕も高校生だし直ぐにって訳じゃないけと、僕には君だけだもの・・)
なんだ?
これ?
僕はもう一度彼女の顔を見つめた。
「けんちゃん、私どうしたんだろ?
足が・・見えない」
僕ははっとして彼女を見た。
「大丈夫、とにかく待ってて、直ぐに戻って来る」
彼女にそう言い残し、僕は急いで親方の元に帰った。
彼女の居場所と今の状況を伝え救急車の要請も付け加えた。
(知抄・・
僕の恋人・・)
また頭が痛い・・
急にお化け屋敷の小屋の中でお客達が驚いて悲鳴をあげるのが聞こえた。
悲鳴・・
そうだ、あの日・・
僕は休憩中に知抄と二人、お化け屋敷の小屋の中にいたんだ・・
彼女に誕生日のプレゼントを渡して、クリスマスには誕生石の指輪をプレゼントする約束をした時だ・・
小屋の中で女性の悲鳴を聞いた・・
ここはお化け屋敷だ、悲鳴など日常茶飯事に聞こえている。
だがあの時の悲鳴は違っていた。
例えて言うなら人が死ぬ時の断末摩の悲鳴のような・・
僕は知抄の安全のため、彼女を物陰に隠れさせ悲鳴のした方に向かった。
そして・・
見た・・
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