桜日和

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その香りが風に舞い、胸がいっぱいになる。 「こゆき、覚えてるか?お前と会ったのも、ここなんだぞ。俺が小五の時で……。あの時は冬だったけどな。」 と、晃太郎が懐かしむように話し掛けた。 ……そうだっけ。わたし小さかったから、あんまり覚えてないや。 「あの時、俺この木を見つけてさ。それから毎年春になると、ここに来てたんだ。」 晃太郎一人で?ずるい。 私が鼻をふんと鳴らすと、振り向いた晃太郎と目が合った。 「そんな顔するなよ。本当は、ずっとお前連れて来ようと思ってたんだからな。けど誘おうとする時に、こゆきは絶対どっか行ってたし。」 と、口を尖らせ言う晃太郎。 そっか。ごめんね。 「でも、今年やっと見れた。こゆきと桜……」
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