2人が本棚に入れています
本棚に追加
その香りが風に舞い、胸がいっぱいになる。
「こゆき、覚えてるか?お前と会ったのも、ここなんだぞ。俺が小五の時で……。あの時は冬だったけどな。」
と、晃太郎が懐かしむように話し掛けた。
……そうだっけ。わたし小さかったから、あんまり覚えてないや。
「あの時、俺この木を見つけてさ。それから毎年春になると、ここに来てたんだ。」
晃太郎一人で?ずるい。
私が鼻をふんと鳴らすと、振り向いた晃太郎と目が合った。
「そんな顔するなよ。本当は、ずっとお前連れて来ようと思ってたんだからな。けど誘おうとする時に、こゆきは絶対どっか行ってたし。」
と、口を尖らせ言う晃太郎。
そっか。ごめんね。
「でも、今年やっと見れた。こゆきと桜……」
最初のコメントを投稿しよう!