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「よし、こゆき!あの桜のとっておきの花見の仕方、教えてやるからな」
嬉々としてそう言うと、晃太郎は私を背負ったまま桜の木の方へ走り出す。
落ち、落ちるっ!
振り落とされまいと、わたしは必死に彼の背中にしがみついた。
桜の木の下で、晃太郎は背中からわたしを下ろし、彼はその向かいに腰を下ろした。
そしてわたしの背を、おまじないを掛けるみたいに撫でてくれる。
「疲れてないか?」
そう労いながら。
わたしは大丈夫よ。
きっと晃太郎の方が疲れてる。
首を傾げて心配していると、晃太郎がふっと笑い、草の上にごろんと横になった。
まるで日向ぼっこする猫みたいに。
そしてわたしを見て言った。
「ほら。こゆきも横になって、上を見上げてごらん。」
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