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言われた通りにわたしは彼の隣に寝転んで、指を差している彼の目線の先を追う。
わあ……と、思わず声が漏れた。
春色の青空にとてもよく映えた薄紅の桜が、見開いたわたしの目にも溢れんばかりに映る。
それは幻想的で、美しい旋律が聞こえそうな程。
キラキラと枝花の隙間から零れる陽射しに、わたしは思わず目を細くした。
「綺麗だろ。これが、ずっとこゆきに教えたかった事。俺の大好きな景色。」
晃太郎の、大好きな景色……。
これをわたしと見たい。
そう言ってくれた事が嬉しくて、鼻の奥がつんとした。
しばらくすると、晃太郎が静かになって、隣からは心地良さそうな寝息が聞こえてきた。
わたしを差し置いて寝るなんて。
そう思ってみたが、腹は立たなかった。
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