(1)「僕はかわいくなんてない!かっこいいんだ!」

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――はぁ。 近所のおばさんに、また「かわいい」を言われた。 いっつもだ。毎回毎回同じ事しか言わない。まあ、おいしいものくれるから、いいんだけど。 でもでも、僕のこと、「かわいい」というのだけは許せない。僕は「かわいい」ではない、「かっこいい」んだよ! 足はすらっと長くて、長身。顔はもちろん整っている。そして、綺麗な青い瞳!黒髪だって忘れちゃあいけないさ。僕は至って〝普通〟の男子高校生なんだからね。 でも、幼馴染の女子も、僕の事を「かわいい」って。おかしいだろ!僕の方が絶対身長高いはずなのに! た、高いはずなのに、いっつも頭を撫でるんだ。その子はいつもおっとりしてて、とても人がいい子だけど、此ればかりは許せないな。 まあ、いいや。もうすぐ学校だし。 ――よ、るな。相変わらず不機嫌そうだなあ! 友達の「和」だ、僕の事を「るな」って。誰だよ!僕の名前は「月人(つきと)」だ!決して「るな」って名前なんかじゃない! なんでみんなして頭を撫でるのかなあ。 ――はぁ・・・・・・。 とまた盛大な溜息を吐いていると、猫が僕の隣をすいーっと横切った。 と、思ったら立ち止まり、「ぷっ」とにやけた。 ・・・・・・ん?猫って笑うっけ? すると、他の学生ではない、〝猫からの声〟らしきものが聞こえてきた。 ――おまえ、もしかして、自分が〝猫〟だってこと、しらにゃいんでしょ? コイツは何を? ――まだわからにゃいのかい?おまえは、〝猫なんだよ〟。足見てみ?手見てみ?肉球あるだろ?な? その猫のいわれるがままに、僕は自分の手足を交互に見遣る。 ――!? ――な?おまえも、おれと同類ってわけさ。 僕は、いままで何を勘違いしていたんだろう。だからか、猫の声が分かるって。 猫はしゃべらない。 違和感があると思った。僕は、まわりの、他の学生たちと同じだと思ってた。けど、結局違った。僕は・・・・・・。 人間なんかじゃなかった。
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