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――はぁ。
近所のおばさんに、また「かわいい」を言われた。
いっつもだ。毎回毎回同じ事しか言わない。まあ、おいしいものくれるから、いいんだけど。
でもでも、僕のこと、「かわいい」というのだけは許せない。僕は「かわいい」ではない、「かっこいい」んだよ!
足はすらっと長くて、長身。顔はもちろん整っている。そして、綺麗な青い瞳!黒髪だって忘れちゃあいけないさ。僕は至って〝普通〟の男子高校生なんだからね。
でも、幼馴染の女子も、僕の事を「かわいい」って。おかしいだろ!僕の方が絶対身長高いはずなのに!
た、高いはずなのに、いっつも頭を撫でるんだ。その子はいつもおっとりしてて、とても人がいい子だけど、此ればかりは許せないな。
まあ、いいや。もうすぐ学校だし。
――よ、るな。相変わらず不機嫌そうだなあ!
友達の「和」だ、僕の事を「るな」って。誰だよ!僕の名前は「月人(つきと)」だ!決して「るな」って名前なんかじゃない!
なんでみんなして頭を撫でるのかなあ。
――はぁ・・・・・・。
とまた盛大な溜息を吐いていると、猫が僕の隣をすいーっと横切った。
と、思ったら立ち止まり、「ぷっ」とにやけた。
・・・・・・ん?猫って笑うっけ?
すると、他の学生ではない、〝猫からの声〟らしきものが聞こえてきた。
――おまえ、もしかして、自分が〝猫〟だってこと、しらにゃいんでしょ?
コイツは何を?
――まだわからにゃいのかい?おまえは、〝猫なんだよ〟。足見てみ?手見てみ?肉球あるだろ?な?
その猫のいわれるがままに、僕は自分の手足を交互に見遣る。
――!?
――な?おまえも、おれと同類ってわけさ。
僕は、いままで何を勘違いしていたんだろう。だからか、猫の声が分かるって。
猫はしゃべらない。
違和感があると思った。僕は、まわりの、他の学生たちと同じだと思ってた。けど、結局違った。僕は・・・・・・。
人間なんかじゃなかった。
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