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プラタナスの木からの張り込みが終わったと思ったら、今度は事務所フロアの片隅から、出入りする依頼客の動きを観察をしている。
アヤメに指摘されるように、確かに、奇妙な行動をする猫に違いなかった。
「お前さん、僕たちに頼みたい仕事でもあるのかい?」
零門はブラックハートに近寄った。
猫は伸びをして、零門を見つめ返した。
にゃ。
「おや、返事をしたぞ」
ブラックハートはソファから飛び降りると、室内を徘徊しはじめた。部屋の四方をいったりきたりしていたが、ワークデスクの上のパソコンが気になるらしかった。
デスクをめがけて跳躍した。
キーボードに前あしが触れた。
「あ、こら!」
零門は笑いながら、猫をたたくまねをしてみせた。
「ブラックハートがいつ頃から、ここに居候するようになったのか調べよう」
零門は提案した。
防犯カメラは、学校の正門前、裏門、校舎のエントランスホール、プラタナスの木の上、廊下、校庭など多箇所に設置されている。
2週間前から現在に至るまでの、画像の解析から始まった。
ブラックハートが突然出没したのは、10日ほど前である。そこから4日ほど遡れば、いつ頃、どこから現れたのかわかるだろうと、考えたのだ。
24時間監視体制の防犯ビデオを、設置場所ごとにチェックしていく。
時間を早回しにして、零門とアヤメの二人は、解析を急いだ。
深夜2時30分の正門前の画像が発見されるまで、それほど時間はかからなかった。
「案外、あっさりと見つかったな」
拍子抜けしたように、零門がぼそりと言った。
「ホントね。あっさりしてる時って、あとがね・・」
アヤメがかたわらで溜息をついた。
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