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「お邪魔しまーす」
「わあ゛あぁーー!!!……は、入ってくるな!!満員だぞ!」
「え?まぁ確かに大人2人は無理だけど……ペット1匹と大人1人だったら入れるでしょ?」
「大型犬は無理」
「僕じゃなくてクーちゃんがペットでしょ。小型犬だから大丈夫だよ」
お風呂に突撃するとメイク落とし中のクーちゃんが悲鳴混じりに反抗してきた。
……僕をペット扱いするなんて失礼だ。
どう考えたってクーちゃんがペット枠でしょ。
「…………。」
「…………ジ、ジロジロ見るな。クレンジング中だぞ」
「クレンジング?って何?」
「……メイク落とし中」
「ふーん」
ポンプから謎の液体をプッシュして顔に馴染ませていく世界のシン様。
……随分とチビチビと使っている。
テレビのCMとかだとバシャバシャ顔に付けていなかったっけ?
濃いメイクもスルンと落ちる!とか何とか女優さんが言っててさ。
再びクーちゃんがクレンジング容器に手を伸ばした所で、手伝うつもりで思い切りポンプを押してみた。
すると一気に大量の中身が飛び出て、クーちゃんの手のひらにタイミングよく液体が着地する。
「……あー……アリベル」
「なに?」
「…………ありがと……な」
「え?うん」
「……でもこのクレンジングな……」
「…………。」
「……シュウウ〇ムラってやつで……」
「え?なにそれ。変な名前。ユカリさんとハセガワさんの次はシュウウエ〇ラ?なんでこれだけフルネームなのさ」
ユカリさん、ハセガワさんに続いて名付けられた名前。
今まではウサギのぬいぐるみとアヒルのおもちゃだったのに、今度はメイク落としにまでクーちゃんは名前をつけたらしい。
それも謎のフルネーム。
クーちゃんの基準はよくわからない。
「……あー……そーゆーブランドってゆーか……その……」
「ふーん、結構いいやつなんだ。千円くらい?でもチビチビ使ってたって仕方ないじゃない。無くなったら僕が買ってあげるからたくさん使ったら?」
「…………いや…………自分で買う」
手のひらに溜まっている液体を丁寧にお顔に擦り込ませていくクーちゃん。
時々お湯を加えて馴染ませたりした後、シャワーで一気に顔を洗うと、子犬みたいにプルプルと頭を震わせた。
その拍子に、クーちゃんの髪の水滴が四方八方に飛散する。
改めてクーちゃんのお顔を覗き込んでみると、完全にシン君からクーちゃんに戻っていた。
……恐るべし、シューウエムラ。
メイク落としの威力ってすごい。
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