二人の最終定理

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僕の恋人は誰もがご存知のスーパーモデルだ。 ……いや、もはやモデルじゃないかも。 今ではアーティスト活動の方が中心で、現在はワールドツアー中。 イギリスからドイツ、アメリカ、ニホン、その他諸々。 世界各国、各都市を回っていて大忙しらしい。 ……“らしい”というのは。 この恋人はワールドツアー中なわけで。 ワールドツアーの期間は長ーいわけで。 つまり。 僕は8ヶ月もクーちゃんに会えていない。 「(あー……早くクーちゃんと会いたい。早くクーちゃんと話したい。早くクーちゃんに触りたい。早くクーちゃんとーー)」 以下、自主規制。 ……最初は「8ヶ月なんて無理!てゆーか1ヶ月ですら無理だよ!」なんて言っていたけど、実際は僅か3日で禁断症状(?)がでた。 どうやら僕はクーちゃんに大分依存していたらしい。   ……まぁ、仕方ないと思う。 クーちゃんの圧倒的な可愛さもあるけど、なによりクーちゃんとの夜のーー…… 以下、自主規制。 とにかく、僕は地獄の8ヶ月を堪えたわけだ。 そして今日、クーちゃんが帰ってくる。 空港は到着前からマスコミやらクーちゃんのファンやらが大勢押しかけていて大混乱だった。 だから空港の近くにあるカフェで待ち合わせ、という手筈になっている。 「(クーちゃんも……僕と同じ気持ちだったら嬉しいけど……どーだろ)」 期間中、クーちゃんに一度だけ電話をしたことがある。 時差とかあるし、お仕事中だったらマズいと思って電話をする気は無かったんだけど……。 ちょうど4ヶ月経った頃。 色々我慢の限界で勢いで電話をしてしまったわけだ。 で、電話に出たクーちゃんはいつも通り。 まるでコンビニに買い出しに行ってるくらい、いつも通り。 ……でも、最後の最後に一言。 『……………………会いたい』 本っっっ当に小さな声で。 そう一言だけ呟いてくれた。 たったそれだけで残りの4ヶ月を乗り切ったんだから、僕も単純だ。 でもクーちゃんはそれを見越して言ったんじゃないかという、一つの可能性もあるわけで。 こうして僕はひたすらコーヒーと睨めっこをしながら時を待っている。
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