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「……クーちゃん、これハート?」
「…………。」
「クッキーの形をハートにするとかさ、もっとストレートに愛情表現してくれてもいいんじゃない?」
「……………それで充分、ストレートに表現してるだろ」
「ってことはこれ、やっぱりチョコペンの汚れじゃなくてハートだったんだ」
「っ!!……ゔーーーー」
自ら墓穴を掘ってユカリさんに顔を埋める小動物。
ウキウキ気分でソファーに座ると、隣の小動物に微笑みながらユカリさんクッキーを一枚つまんだ。
「あ、美味しいこれ!」
「ユカリさんを頭から食べるな!この化け物!」
「……じゃあユカリさんの形にしないでよね」
「くらえ!ユカリさんの仇!」
「あ、ちょっと!僕の形のクッキー!それ楽しみにしてたんだから!」
横から伸びてきた手が僕の形のクッキーを一枚かっさらうと、容赦なく頭からかぶりついた。
謎の高笑いをしながらバリバリと僕(の形のクッキー)を貪る食欲旺盛な珍獣。
……青い部分、何味なのか気になってたのに。
クーちゃんが食べるんじゃ、わからないじゃない。
なんて思って……
ふと、あることを思いついた。
うん。
この方法ならクッキーの味もわかるし一石二鳥だ。
「ふははははー!!見たか!ユカリさんの仇!これぞユカリさん親衛隊のーーッ」
クーちゃんの顎を持ち上げると、容赦なく深く口付けた。
途端、一瞬で僕にもたれかかる世界のシン様。
……可愛い。
もはや抵抗することすら忘れている。
「……ちょっと甘い?青い部分、何味なのこれ」
「……バタフライ……なんとかって……ハーブティー……」
「へー、こんな青色のハーブティーなんてあるんだ」
離してあげた途端、ユカリさんに身を隠してしまった我が家のペット。
……耳まで真っ赤だ。
なんか「ゔーゔー」唸る声まで聞こえてくる。
「(……昔はこんなクーちゃんの顔が見れるなんて思わなかったなー)」
しみじみと思いながらクッキーをひとつまみして、ユカリさんに隠れているクーちゃんを眺めた。
……うん。
まぁ健全な関係だったらなかなか見れない表情だ。
やっぱりそういう意味でも、特別って感じがして嬉しかったりする。
……なんて考えていると。
「…………。」
ふとユカリさんの隙間から。
ほんの一瞬だけクーちゃんが僕を見てきた。
……またすぐに引っ込んでしまったけど。
…………今の視線の意味って。
「……なに?クーちゃん、もっとしたいの?」
「っ、な、なにが」
「キス」
「っ…………べつに…………てゆーか……変なこと………言うな」
「ふーーん、そう。わかった。じゃあ今日はもう止めとくね」
「…………。」
言った僕に、ちょっとの間があって。
ユカリさんごと、小さな身体が僕にもたれかかってきた。
で、一言。
「…………今日………バレンタイン、だし」
「…………。」
「……アリベルが……言うなら…………その……オレ、から……してやらなくも……ない…………今日……バレンタイン……だし」
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