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ボソボソ、ゴニョゴニョ。
くぐもった声で告げられた言葉。
ユカリさんの耳を弄りながら、そんなことを言う幼なじみ。
「……じゃあお願いしちゃおっかな?今日バレンタインだし」
ニッコリ笑顔で返した僕に、目の前の小動物がソワソワとし始めた。
……自分で言い出したくせに、めちゃくちゃ困惑している。
「ゔーー」なんて鳴き声まで聞こえてきて。
しばらく眺めていたけど、なんだか可哀想になってきて僕の方から口付けた。
すると驚いたクーちゃんが一瞬固まったものの、すぐに離れた僕の髪を掴んで引き寄せて、今度は自分から口付ける。
「……今の、きっかけを作ったのは僕だよね?ノーカウントじゃない?」
「……わ、1カウントだ」
「なんでよ」
「……今日、バレンタインだから……」
「……なにそれ。意味わかんないよ」
言って笑うと、今度はどちらからともなく口付けた。
……クーちゃんが僕の幼なじみというのは、確かに昔から変わっていない。
でもそれに加えて、クーちゃんが僕の大切なパートナーになるだなんて、きっと高校生の頃の僕には考えられないことだ。
考えられないこと……だろうけど。
昔の僕に一言言えるとしたら、僕はきっとこう言うと思う。
今の僕は、毎日とても幸せだってこと。
ーーfin
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