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大好きだった姉が、今日結婚する。
姉の昔からの口癖は「結婚式は豪華にしたいの」だった。
私からすれば、結婚式なんてただお金のかかる婚活パーティーだ。高い祝儀は参加費用、出てくる料理だって元を取れているのかもわからないし、髪の毛もセットしていかなければならない。
ドレスを着る為に数ヶ月前からエステに行き、この日に人生一度、二度、あるかないかのベストコンディションを持ってくるわけ。
それほどまでして綺麗と言われたいのか。それは自己満足なのか。
私にはよくわからない。
もやもやした気持ちは、ずっとあった。今が最高にもやもやしているのかもしれない。
その笑顔は誰に向けた笑顔なのか、何度も考えた。数ヶ月間、毎日考えたけど、今日までいい結論はでなかった。いや、今もでてない。
あなたのそんな笑顔が見たくなかった。
どうすればいいの、この気持ちは。
結婚式が決まってから、数え切れないほど見てきた姉の笑顔は、私を高揚させ、葛藤させ、人生一番とも言えるほどの無力を引き出した。
……でも、綺麗なんだろう。
「ねえ、見てよ」
寝たふりをした私にそう言った姉が目の前で準備をしている。
私が見たくないと思っていることも姉には気付かれている。当たり前だ。そう思う原因も姉にあるのだから。
でも、私の無力に満ち溢れたこの気持ちを吹き飛ばすにはどうしてもその言葉を聞き入れなければいけなかった。
しょうがない。
――目を開けるとそこには、今まで見たことのない笑顔の姉が純白のウエディングドレスをきてこっちを見ていた。
やっぱり、綺麗だ。
でも、その姿は私をより苛立たせた。
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