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「ウエディングドレス、どうする?」
挙式3ヶ月前。こう着状態だった姉妹の関係に自ら亀裂を入れた姉。
そりゃそうだ。3ヶ月前ならもう衣装は決定した方がいい。ウエディングドレスの製作も終盤に……いや、完成しておくのが好ましい。
でも、私の姉への不信感はこれでさらに大きくなった。
姉はたぶん、初めから私に半信半疑状態でウエディングドレスの製作を頼んだに違いないと思う。私が事故で手首と足首を損傷していなくても、絶対ウエディングドレスが3ヶ月前に完成するとは思っていなかったのではないだろうか。
昔から夏休みの宿題を最終日に必死こいてやるような人間の私に、学校への提出書類を締め切り当日の朝に母に出すような私に、期日が守れるとは思っていなかっただろう。
私の姉だから、そう思っていたに違いない。
落ちぶれたのか、元から落ちぶれていたのかは分からない。でも、私はできそこないだ。
姉に勝っているところはあるのか。勉強も、運動も、顔も、印象も、全て姉には勝てない。
唯一勝っているところがあるのならば、それは素晴らしい姉を持った哀れさからくる、どんなことでも消極的に考えてしまうこのネガティブ表現力だろうか。
そんな素晴らしいネガティブ表現力を持つ私の推測からするに、姉の一言から読み取れる姉の真意はこうだ。
ただちにウエディングドレスの製作を中止すると宣言せよ。
そうすれば姉は心置きなく、プロのウエディングドレスを選べるのだ。すでに選んでいるかもしれないけど。
どうするって言われても、それはもう諦めるって言わせたいんでしょ?むしろ期日を守れない私に降りかかった手首と足首の怪我は、逆に幸運だったと思ってない?どうせ守れないのに何で妹を信じてしまったんだろうって、後悔してない?
もう、言うしかない。
「どっちがいいの?」
憎たらしいな。そう思われていないかな。自分でも思う位、本当にこの一言は顔を歪ませるほどの言いようだ。
姉の顔は一切変化がなかった。ただ、吐いた言葉は辛辣そのものだった。
「もう無理だから、諦めるね」
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