5人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……?」
彼は固まった。
私はまっすぐ、彼を見ていた
「ひなちゃん…?」
彼は、私の名前を知っていた
ポストには、
名字だけしか書いていないのに
「そうです」
「本当に……?」
「はい」
「……そっか。あなたが」
彼は、少し黙りこんでから
こう続けた
「俺、あの日、プランターと
キーホルダー交換したの
覚えてるんです
あのキーホルダー大事にしてて…
その子が
お花が好きだったことは覚えてたんですが
顔ははっきり分からなくて
ヒナって名前は、覚えてたんですけど
幼稚園のアルバムもヒナって名前、
3人もいたから」
彼も、覚えていたんだ
あの日の事を
この思い出を知っている
この人は
同姓同名とかじゃなくて
間違いなく、あのアルバムの彼だ
「私も、あのプランター大事にしています
ポストの前で、
買ったってみせたプランター
本当は、あなたからもらったものです」
「あぁ…俺のでしたか
なんとなく似てるなって思ってたけれど
まさかと思って…」
彼は笑った
「あの…俺、あなたが好きなんです
ずっと会いたいって思ってて
夢みたいだ
あの…突然だし、顔覚えてなかったし、
変だと思われるかもしれないけど
本当に、ずっと…」
「私もです
私もあなたに気づけなかったから
こんなこと言えないかもしれないけど」
彼の会話から間も挟まず
そう言うと、彼は笑った
「今日これから誘ったら、迷惑ですか?
どこか出かける予定でしたか?」
「え?……いえ」
「じゃあ、行こう」
彼が手を握って歩きだす
初恋でひきずり続けた
彼が目の前にいる
その現実を少しして受け入れた始めたとき
私は、思っていた
ありがとうミルク
君は、ご主人に会いに来たんじゃなくて
私に知らせに来てくれたんだね
君にはあの非常扉の隙間のベランダから
プランターが見えていたから
そのときご主人と
私の願いが同じだと、分かったんだね
満足な普通の毎日に
釘をさしてきたもの
普通じゃない、霊との一定期間
嫌だったはずのその期間
彼の猫に私は、心から感謝した
最初のコメントを投稿しよう!