迷い猫が最後に伝えたかったこと

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何をやっても「普通」という評価 得意よりはダメかもしれないが 苦手というものもないし、 「普通」は、 私にはちょうどいいのである 普通の私が送る 普通の日常 けれど、そんな「普通」に 釘をさしてくるものが 一つだけあった その一つも 最近は、なかったものであったのに 私は、今日思い出してしまった 一匹の猫をみたときに。 「猫……」 真っ白な猫だった ある夜のこと 一人暮らしをしている 私の部屋に気がつくと猫はいた 初めにいっておくと 私は、猫を飼ってはいない 友達の猫とか実家の猫とか 預かっている猫でもない この猫は 今日、この瞬間に初めてみた、猫である 「にゃー」 子猫ではなく長老であろう猫だが 鳴き方はとてもかわいらしい 一階の1Kのこの部屋 風通しをよくするため 窓は、今あけたばかりだ。 けれど、ここから入ってきた猫ではないということも分かる。 秋の心地よい風が 私に優しく当たると、はっとして 知らないうちにぼーっと 私は、猫を見つめていたことに気づいた。 …私には分かっていた。 この猫は 生きてる猫ではなくて もうこの世の猫ではないことを。
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