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本当のことを言うと、どうでもよかった。
あれも逃した、これもしくじった、端から上手くなんかいくわけなかったんだから。
途方に暮れることも許さない周囲の流れにただ身を潜めて、ビルの狭間を吹き抜ける夜風をうっかり清々しいなんて悠長に思ったりして。
見上げた、さっきまで俺が身を置いていたビル。一段一段がまどろっこしく感じて、短縮で飛んだ非常階段の踊り場の先ではバタバタと、俺を探せと下っぱが焦りだした気配を伝えてくる。
奴ら叔父貴にキレられることしか頭にない馬鹿だから、バレる前に俺を見つけようと躍起になってるに違いない。
せいぜい俺から目を離した時間を馬鹿な脳味噌で計算して、馬鹿みたいに遠くまで足を運んだらいい。
灯台もと暗し、だ。
バタバタと、俺を探す気配は、俺から遠ざかる。
なぁ、どこ行くわけ?
俺の行く宛に心当たりがあるみたいに、一直線に。見当が付くほど仲良くなった覚え、ないんだけど。
大した高さもなかったはずなのに飛び降りた衝撃か、若干痺れる足首。それとは少し違った違和感に視線を足元に戻す。
これはこれは。
上でバタバタしてた奴らは、この気配を消すプロを見習うべきだろう。
正常な血の巡りを取り戻していく足首に、灰色の猫がすり寄ってくる。
験担ぎも縁起も、あったもんじゃねぇ。
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