【ぼくとあの娘と機械の龍】

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 その新たなる巨大な機械龍は、2,3度周囲を警戒するよう な動きを見せた後、先に出現した機械龍と対峙するなりそこで 沈黙した。  西の空では陽が傾き始め、茜色の空が拡がり始めていた。  巨大龍の暴行によって甚大な被害を被った市街地からは黒煙 が立ち上り、遠くからサイレンの音が鳴り響くのが聞こえる。  防衛軍は2体の巨龍との戦闘により壊滅させられ、暴れまわ っているもののうち1体は上空へと逃走、姿をくらました。  そして現れたもう1体。  軍の基地にて突如荒れ狂ったかのよう暴れだし、格納庫を破 壊してここまでやってきた……機械の龍。  それは、ブルーのカメラアイを眼前の相手に向け、まるで威 嚇するかのように口の部分を動かしていた。  口蓋部が上下する毎に、鳴き声のような音を出している。  その音は、機械龍から相当離れた場所にいる三人にも聞こえ るほどだった。  2体の事の成り行きを、固唾を飲みながら見つめる夏美た ち。  夏美は拓斗の身体をしっかりと抱きしめ、拓斗はなぜか、そ の腕を振りほどこうとしていた。 「あいつら……まるで、まるで会話でもしてるように見えるん だが」  松島の言葉に夏美、拓斗の二人もその様子に目を見張った。  確かに、対峙する巨大な2体は互いにそれぞれの「信号音」 を発し、それはまるで2体で会話をしているような印象を与え るものだった。  そしてさらに眺めていると、黄金龍と戦っていた機体の腕か らワイヤーが発射され、それが後からやって来たダークシル バーの機体の胸のあたりに突き刺さった。 「ギシャァァーーー!」 「キュイィィィぃーー!」  黒銀機体はワイヤーを片方の手でつかみ取り、それを引き抜 こうとする。  高圧の電流が流れているらしく、そこにスパークが飛び散 り、機体に開いた穴から白煙が昇り始めた。  満身の力を込め、ワイヤーを引き抜いた黒銀。  白銀の機械龍が突進して黒の機体の首を抑え込みながら、そ の頭部を相手の頭部に近寄せた。  機械龍……ロボット同士の戦いが始まるかと思われた。 ギギギ……ギシッ!  金属の軋る音が響き渡る。  一挙手一投足、巨体が奏でる駆動音。  巨体が地面を移動する事で舞い上がる大量の砂煙。  そして機体のエンジン系から放出される熱気は、周囲の空気 を焼け焦がしているようだ。  機械龍たちの駆動系。  その動力源となるもの。  
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