200年後の天命

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 ごく稀に、前世の記憶を持った人がいる。私もそんなごく稀な1人だ。  でも私は、自分の前世を誰かに話そうなんて思わない。英雄などと呼ばれていた自分の前世なんて……。 ――――私はこの場所が嫌いだ。  この場所には思い出があり過ぎる。前世の記憶とかは関係ない。私の今の人生においての思い出だ。  嫌いなはずのこの場所に、私は気がついたら足を運んでいる。  瞼を閉じると思い出す。この場所にはかつて、私が店長を務める飲食店があった。  まだ20代の女性でありながら、店長という大役を任され、毎日があっという間に流れていく。充実していた。  私のお店は小さいながらも繁盛しており、常連のお客さんも多い。名前までは流石に覚えきれてはいないけれど、ほとんどが見知った顔。  また、私を支えてくれる従業員もいた。学生、フリーター、パート、様々な年代の人達。私の大切な仲間で、家族同然だった。  みんなにまた会いたいなぁ。  でもそれはもう叶わない。  時折吹く風は、潮の香りを運んでくる。  目を閉じていても、その香りは私に現実を突き付け、幻想から叩き起こす。私はその潮の香りで反射的に目を開けた。  目を開けると 、そこには何もない。ただ瓦礫が散乱していた。
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