第一章 誘わないで

12/21
前へ
/409ページ
次へ
翌日。 捻挫した手首に包帯を巻いて学校へ。 「左手でよかったねー」「うん、ありがと」 ユマが心配そうに寄って来た。 背後からの刺すような視線に気が付く。 「あ、晴美、おはよー」 「……」 ユマが、その視線の主に挨拶をするも、プイッとそっぽを向いて廊下へと行ってしまった。 ″ 晴美 ″ーー 草加部(くさかべ) 晴美。 彼女も同じ中学だった。 長い髪、結ばないと校則違反なのに、それをサラリとなびかせて、高1とは思えない色っぽさを漂わす。 「晴美と円香って、水泳部で仲良くなかったっけ?」 言葉を交わさなかった私に、ユマが不可解そうに聞いた。 「ううん、そうでもなかったよ」 本当は、晴美とは、″ あの事 ″ が起きるまでは、親友同士だった。
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加