第一章 誘わないで

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昼休みに飲み物を買いに教室を出ていくと、聞き覚えのある声に呼び止められた。 「……あ、昨日はどうも」 胡桃沢さんだ。  外見も声も目立つ人なので、あっという間に、周りにいた女子の注目の的。 私の包帯を見て、胡桃沢さんが顔をしかめた。 「やっぱり手首、ひどかったんだ! いったそー! 」 この人、テンション高いな。 私とはまるで違うタイプだ。 「直ぐに保健室で処置をしていたので、治りは早いみたいです、ありがとうごさいました」 ペコリとお辞儀をし、そのまま自販機の方へ向かおうとした。  入学して間もないのに、女子の間で変な噂になるのが嫌だったから。  それなのに、 「待てって! まだ話あるんだから」 怪我していない方の手首を、胡桃沢さんに掴まれてしまう。
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