第一章 誘わないで

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背後から話しかけられ、振り返ると、 「おー、やっぱり美人だ。一年生?」 上級生らしい男子が笑って私を見ていた。 「……迷子にはなってないけど、一年です」 人懐っこい笑顔。 長身のスラリとしたスタイル。 少し緩めたネクタイと、ズボンからはみ出しそうなシャツの裾。 そして、 「ふーん、一人で外観てタソがれてたの?」 階段中に響き渡る、低音で印象的な声。 「別にタソがれてませんけど」 とてもモテそうな人だと思った。 「あ、そ」 「はい」 だけど、軽そうで私の好きなタイプじゃない。 それ以上会話を続けることもなく教室へと急ごうとした。 「あ……っ!!」 なのに、新しい上履きに慣れてないせいなのか、階段から足を踏み外してしまった。
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