第六章 ヒーラー兼魔物使いのボブ

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 水の都キヨメガワでハヤトの住んでいる集落を流れる小川と合流するもう一つの方の河川を遡っていくとボブとその一族たちが暮らしいているキコナンの森へとたどり着く。  この広い森の中でボブとその一族は同じ場所には留まらず住処を変えていく。以前は森の中の一つの場所に留まっていたがモンスターが襲ってくるようになってからは自分達の生活というよりもこの森の自然が荒らされることを憂慮し、森の中を点々と移動する民となった。  彼らは主に木材を加工して弓矢や杖を作ったり彫刻を施した民芸品などで生計を立てている。街にそれらを売りに来る際には人々の目を引く大道芸を見せて楽しませる一芸に秀でた者も少なからずいる。  同じ場所に長くは留まらないが短期間で育つ作物を収穫したり、祝い事があれば狩猟して動物の肉を食すこともあった。  深い森の中で小さな畑に種を蒔いている一人の青年がいる。  彼の名はボブ。年齢はハヤトやゾーイと変わらないのだが青年というよりは少年という方が相応しいくらいの幼さを残している。背も小さめで褐色の肌に黒々とした天然の髪のうねりがより子供らしい印象を与えさせている。  彼の母は舞踏家としての才能を有している。血が繋がっていないことはボブも知っているが実の母子のように仲が良く絆も深い。  一時期ボブの母はキヨメガワで踊り子として活動し街で暮らしていた。ハヤトやゾーイと知り合ったのはこの頃である。  ボブは自然や人を愛する気持ちのあらわれなのかヒーリングの魔法の素質があり、母が街に留まっている間はヒーラーとして学校で学び修練を経た。  そして彼にはヒーラー以前にも別の職業の才能があった。それは魔物使いである。モンスターと心を通じ合わせ、自らの仲間として戦わせることができる。今も一匹のモンスターを仲間にして一緒に過ごしていた。  ボブが畑に種を蒔いているとそのあとにせっせと土を被せている小さなモンスターがいる。全体的に平べったい感じで中央には目が二つだけついている。そして上から見るとまん丸い形をしたジェリースライムはこの辺によく出没する弱いモンスターだ。ボブはこの一匹を大事に育てている。  「いつも手伝ってくれてありがとう。アマモ。」  ボブが軽く撫でながら言うとアマモと呼ばれたジェリースライムは口もないのにピギーッと鳴いて喜んだ。
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