第六章 ヒーラー兼魔物使いのボブ

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 ふと遠くの方から何者かが森の中を歩いている音が聞こえた。ボブはその場に立ち止まったまま耳を澄ました。アマモは敵のモンスターが畑を荒らしにくるのではないかと考えて怒りに顔を紅潮させてピギーと鳴いた。  「アマモ静かに。これは人間の足音だ。人間が二人。こっちへ向かっている、というよりは何かを探し求めてうろうろしている。なぜだろう。根拠はないけど親しい者の気配がする。」  ボブはアマモをなだめるために抱きかかえたままそう呟いた。  次第にボブのいる辺りも騒がしくなってきた。一緒に暮らしている部族の者たちも物音に気がつき始めたようだ。しかし少しするとボブと同じように人間の足音だとわかったのか幾分か静かになった。  それを見計らったタイミングでボブはオオカミが遠吠えする時のような大きく甲高い声をあげた。これはボブが見てくるという合図だった。  その後にも当人同士しかわからないくらいの似たような声が幾つも鳴り響いた。どうやらボブが確かめに行くことを了承してくれたようだ。  ボブは極力音を立てずに森の中を突き進み、足音がした方向を見渡せそうな高い木に登った。そのあとを遅れながらアマモがついてきたが木に登ることはできず、また顔を紅潮させその場でピョンピョン飛び跳ねた。地団駄を踏んで不満をアピールしているようだ。  そんなことには目もくれずボブはなるべく音を立てずに木を揺らさないようにしながら素早く上の方まで登りきった。  辺りには霧が掛かった白色と濃い緑の木々が広がっている。その木々の茂みの中を歩いている二人の男の姿が見え隠れしていた。ボブはその二人の男を目で追った。  すると茂みの間隔が大きく空いている所に差しかかった時ボブには誰かがわかった。  「あの白い格好はゾーイ。するともう一人の剣を下げているのはハヤト。」  ボブは木にしがみついたまま独りで呟いた。ボブは身を乗り出して手を振りながら叫んだ。  「おーい!おーい!こっちだぞ!」  木を揺さぶりながらボブは繰り返し叫んだ。やがて二人はボブに気がついた。お互いに駆け出して森の中で久し振りの対面を果たした。  「ハヤト怪我してる。モンスターに襲われたか。治してやろう。ここよりも他の場所がいい。」  ボブが心配そうに声をかけた。  「モンスターじゃないけど色々あってね。他にもたくさん話したいことがあるよ。」  ハヤトは少し照れくさそうに答えた。
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