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克昭にはまだ本人に伝える気があるわけではなかった。
けれど、抱えすぎた思いは吐き出さなければ、克昭の状態は悪化してく一方なのだ。
蘭華は克昭に生きてもらうために、回復してもらうために、克昭が思う相手を探し出し、克昭の思いが叶う手伝いをしようと決意した。
自分は大丈夫だと、何度も言い聞かせ涙を拭う。
克昭の口から思い続ける相手の名前が出るのを待った。
覚悟はもう出来ている。
俺はもう一度失恋するだけなのだ・・・─────。
「・・・蘭華・・・、愛してる・・・─────。」
蘭華は溢れて止まらなかった涙が、克昭が言った言葉に驚き止まってしまった。
両手で口元を覆い、息を呑んだ。
克昭・・・、今、何て言った・・・?
聞き間違いじゃないのなら・・・、いや、でも・・・。
もう一度聞きたい・・・。
「克昭・・・。」
立ち上がり克昭の顔を覗きこむようにして見つめ、思わず声を変えないままに、克昭の名前を呼んでいた。
伸びてきた手に気づかずに引き寄せられていた俺は、気づいた時には唇に柔らかなものが当たっていることを感じる。
いったい何が起きている・・・?
克昭の顔が近い・・・でも・・・、克昭は完全に現実には戻っていない。
これを克昭は夢だと思うのだろうか。
克昭・・・、俺たちは両思いなのか・・・?
お前をこんなになるまで苦しめたのは・・・俺、なのか・・・?
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